ふること

多分、古典文学について語ります

ワタシと源氏物語~源氏物語の人物名称についてとか

息抜き?じゃないけど、自分語り的な。

このブログも源氏物語について語る率がすごく高いわけですが、いつも人物をどう呼ぶかというので迷いがあったりします。


光源氏や紫の上は、原典でも使われている呼び名なので違和感もさほどないし、六条御息所とかも、そんなに差はないのでいいんですが、個人的に「葵の上」とか「夕霧」とか「雲居雁」っていうのは、ちょっと違和感あります。

「頭中将」も困る。

 

夕霧、葵というのは、主にその人が語られている巻名から取った後世での通称ですが…

葵の上は、原典では「大殿(おほいとの/おほいどの?)」と出てくることが多いので、個人的には「大殿」か「大殿の上」と呼びたいですね。
でもそれじゃ通じないしな…

 

なお、源氏物語で「大殿」というのは、摂政関白レベルの大臣(政権を握ってる大臣っていうか)のことがそう呼ばれているっぽい雰囲気です。光源氏や頭中将がそういう「一の人」の地位に立ったあと、「大殿」と呼ばれていたりします。


葵の上の場合、父左大臣が桐壺帝時代の「大殿」だったから、彼女も「大殿」とか「大殿の君」とか呼ばれたりするわけです。「六条」もそうだけど、なんかこの時代、場所を人の呼称に使ったりするわけで、大殿(厳密には父左大臣を指す)の邸にお住まいになっている光源氏の奥方、みたいなニュアンスですね。

 

雲居雁の場合は「三条の北の方」と呼ばれることが多いので、それでいいじゃん…と思ったりもするんですが、それだと結婚前の呼称にはならないですね。

源氏物語を訳したり、作品化したり、源氏物語について語ったりする場合、どうしても特定の呼称がないと不便なので「葵の上」とか「夕霧」とか「雲居雁」などの呼称が作られたということでしょうが、しかし訳だとか作品だとかで固有名詞かのようにそれらの呼称が使われてしまうと、個人的には違和感MAXだったりします。
(とはいえ、源氏の訳は子供の頃にしかちゃんと読んだことがないので、どういう風になってたかあまりよく覚えていない…。与謝野晶子訳で、やたらめったら「女王」という言葉が使われていたのは覚えてる。紫の上も「紫の女王」とか言われてたけど、今はそれも違和感あります。原典で見ない言葉だから)

各訳を見直してみようと思ったのだけれど、うちに一個もないことに気がついた…。谷崎源氏も与謝野源氏も田辺源氏も、橋本源氏すら全部読んだはずなのに、すべて実家に置いてきた…(谷崎・与謝野源氏はまだ捨てずに取っておいてくれてるかも知れないが…)
円地源氏も小学生の頃に読んだ覚えあるんだけど、あれは抄訳だったなあ…
なぜだろう、橋本源氏は全部読んだはずなのに、内容をちっとも覚えてないんですよ。


ある時期から原典しか読みたくないみたいな変なこだわりが出てきてしまったので、自宅に訳があるのは全集系だけになっちゃった。
岩波文庫の古い版(山岸徳平氏の)が文庫本で持ち歩きやすいのでそれをいつも愛読してて、それでも「読点の打ち方が気に入らない!」とかプンプン怒るようになっちゃって、源氏物語大成を買ってみたり…

そのくせ、ちゃんと研究してみようとかいう発想はなくて、評論とか論文とか読むのもずっと避けてたぐらいです。どうやら自分の頭の中にある「マイ源氏物語」以外のものを受け付けない的な、病重き状態にまでこじらせていたので(笑)

最近はちょっと正気を取り戻しつつあり、ネットで検索して出てくる論文とかは読んでみたり、資料本みたいなのを買ってみたりはしますが、相変わらずまともに研究本を読んでみようという気にはなれないでいるという、中途半端な感じです。
ああ、今でも、作家の訳本は読めない状態かも。まだまだ病重いわ(笑)
あさきゆめみし」だけは許容。マンガだからかな、なんとなく。


…呼称の話に戻ると。

源氏名」って言葉のニュアンスからも、「夕霧」だとか「雲居雁」とかは、ちょっと優美すぎる気がするんですね。
夕霧については、「乙女」のあたりで「若君」→「冠者の君」「侍従の君」とか呼ばれるあたりの初々しさ、「中将」になってちょっと大人びたけどまだまだ若手っぽい感じ、そこから「宰相の中将」になって、いよいよ出世した観出てきて、さてそこから「中納言」になって「おお、もう中納言か!偉くなったなあ」としみじみし、「大将の君」になって、うんすっかり高官だね!という威厳があって、でもなんか「中納言」「大納言」よりも「大将」の方が雄々しい感じがしていいよね、とか…ともかく官位による呼称の変転にめっちゃ萌えるので、「夕霧」だけよりせめて「夕霧の大将」とか官位をつけて呼びたい。

 

まあそこは光源氏についてもですが、彼はあまり呼称の変転が少ない気がして。「中将→大将→権大納言内大臣太政大臣」ぐらいでしたっけね。

 

紫式部は、きっと官位とかそういう呼称で生じるイメージっていうのも計算して、登場人物の官位を決めてたんだろうな~と思います。
女性も男性も、その場面でどういう呼称で呼ぶかについて緻密な計算があるのを感じるので、なるべくいつも原典どおりで呼びたいなと思う。

 

でもやっぱりそれじゃ話が通じないよね。困った。

 

そういうわけで、ブログ記事書く時も、人の呼び方をどうするかいつも悩みながら書いてたりします。カッコつけて通称つけてみたり何だり。

そういう試行錯誤も「ああこの人こじらせてるからな」と生ぬるく見守ってやって下さると嬉しいです。