ふること

多分、古典文学について語ります

万葉集・大伴宿禰家持、交遊(とも)と別るる歌三首

ときどき、この前買った万葉集の文庫本をぱらぱら見ています。
それで目についた歌など。

 

万葉集巻四(相聞)、大伴宿禰家持、交遊(とも)と別るる歌三首

 

けだしくも人の中言聞(きこ)せかも ここだく待てど君が来まさぬ(680)

おそらく、人の中傷をお聞きになったからだろう。こんなに待っていてもあなたがいらっしゃらないことだ

 

なかなかに絶つとし言はば かくばかり息の緒にしてわれ恋ひめやも(681)

かえって仲を絶つと言うならば、このように命までかけて私はあの方を恋しないであろうに

 

思ふらむ人にあらなくに ねもころにこころ尽くして恋ふるわれかも(682)

私を思ってくれる人ではないのに、ねんごろに心を尽くして恋しく思っている私であるよ

 

大伴家持が、男性の友人に送った歌です。

いや別に、ワタシが元腐女子だからといって男性同士の相聞歌ばかり目につくというわけではないわけでもないんですが、だからといって別にBLソング♪とか言いたいわけではなくて、そういう関係とかそうじゃないとかそういうことはあまり関係ないんじゃないかというか、そうであってもなくてもいいんじゃないかとか、まあともかく、男性同士でも女性同士でも何でも、熱烈な歌を贈ったっていいんじゃないですかね!

いちいち区分して同性の異性のという現代的感覚の方がせせこましい気がします。

 

とりあえず、何かしら中傷が相手の耳に入ったのではないかと思うようなことがあり、家持より身分が少し高そうな人が、来てくれる筈なのに来てくれなかったとか、冷たくされたとか、そういうことがあったんですかね。

むしろ政治的な情勢とかが背景にあったのかな~とか思ってしまうんですが、さらっと検索もしてみましたが、相手が誰とかいう話は見かけなかった…
家持の方に政治的な思惑があって相手の機嫌を取ろうとしてこんな熱烈な歌を贈ったんだったりして?政治的策動なんじゃないかな?とか、妄想的にはモヤモヤ考えてます。

 

ともかくこんな風に、男女の恋歌の中にさらっと普通に男性同士の恋歌も混ざってる万葉集の世界観が好きだなあ。